相談consultation

ちょっと教えてQ&A

遊休不動産を活用したい

駅から離れていて利便性が悪い土地を所有しているのですが、
何かいい活用方法はありますか?

不動産はその時々により、最も高値がつく活用方法は異なります。また、これは立地によっても異なります。お持ちの遊休不動産が、駅近の立地であれば、周囲の利用方法を見て土地の活用方法を考えることは容易ですが、駅から離れた立地など、ご活用方法に迷われる場合もあるかと思います。
例えば、駅から離れていても、幹線道路沿い立地の遊休不動産の活用であれば、低層の店舗を建て、賃貸することが有効かもしれません。また、建物を建てるリスクを負いたくない、かつ土地の賃借需要(地場に展開する本屋、カーセンターなどが、土地を賃借して商業用の建物を建てるなど)の旺盛な地域であれば、土地を賃貸して、地代収入を得ることも可能かもしれません。
周囲に空き地や資材置き場などが点在しているような遊休土地でも、潜在的なポテンシャルを有する場合もあります。数年前は住宅地の中に、老朽化した社宅や、遊休土地又は資材置き場などがあり、いまいちピンとこない地域でしたが、ひとたび需要が見直され、建売業者が一旦住宅を作り始めると、瞬く間に一帯が、若年ファミリー層向けの建売住宅となり、地域の様相に変化がみられる。といった事例もみられます。このように、お持ちの遊休土地が、潜在的な可能性を持つ住宅地であれば、分譲業者に売却する方法もあります。
また、現在は不動産市況が活況を呈していますが、時代によっては、不動産市況が悪化している場合もあります。このような時は、すぐに建物用途を決めず、一定期間土地をねかせて駐車場などとして利用し、その間市況回復のタイミングを待ち、後に建物用途を決める。といった方法も一つかと思います。また、借入れで建築を行う場合は、金融市況によって銀行の融資状況も左右されます。
いずれにせよ不動産は生き物ですので、お持ちの遊休不動産の、最も高値がつく活用方法はその時々により異なります。
東京都不動産鑑定士協会は、各所で定期的に相談会を開催しております。お悩みの際にはお気軽にご相談にいらして下さい。

近所にある企業の寮が改修され、現在はシェアハウスという建物になっています。
最近増加しているシェアハウスとはどのような建物なのでしょうか。また、所有している戸建住宅をシェアハウスに転用することはできますか。

シェアハウスとは、事業者が入居者の募集を行い、自ら管理する建築物に複数の入居者を住まわせる居住施設をいいます。居室は個室ですが、キッチンやバス・トイレ等は共同で使用することが多いです。従来は経済面での負担を減らすために住む人が多かったのですが、最近は20代~30代を中心に、人とのつながりや交流を求めて住む人も多いようです。
2013年9月6日に国土交通省が全国の自治体に対して、シェアハウス(貸しルーム)は建築基準法において「寄宿舎」に該当する旨の通知を発表しています。したがって、シェアハウスに転用するのであれば、建築基準法上の「寄宿舎」の要件を備える必要があります。
「寄宿舎」は建築基準法上の「特殊建築物」に該当し、建築関連法規としては主に以下の要件があります。

採光 各居室に居室面積の1/7以上の採光上有効な「窓」を設置
天井高 天井高は2.1m以上
耐火構造 防火上主要構造(間仕切壁など)を準耐火構造とする
間仕切壁 1. 天井に達していない、2. 凹凸を設けて空間を上下に区画、3. 2段区画などは不可
避難経路 延床面積が200㎡を超える場合、2以上の直通階段の設置が必要(2方向避難)
用途変更 延床面積が100㎡を超える場合、既存住宅・事務所等は寄宿舎への用途変更が必要となり、建築確認申請が必要

※その他、近年のシェアハウス増加に伴い、各自治体による条例、規制等が新たに規定され、シェアハウスとしての要件が定められている場合があります。詳しくは、各自治体にお問合せいただく必要があります。

現在全国に約500のシェアハウス運営業者が存在し、約2,500棟を運営していますが、そのうち2,000棟以上が戸建住宅を再利用したものです。戸建住宅からシェアハウスに転用する場合、上記の要件等を備えるためには用途変更や改修工事を行う必要があり、未実施の場合は法令違反となる可能性があります。
シェアハウスへの転用を考えている戸建住宅が、「寄宿舎」として適法な建物に改修可能かどうかを慎重に検討することが必要です。

所有ビルの1階をテナントに貸してきましたが、ビルも古くなり、大地震が起きたときどうなるか心配です。テナントに出て行ってもらって、建替えたいと考えているので
すが、どうすれば良いでしょうか。

まずは、建物の建築時期を確認し、昭和56年以降に設計・施工された建物かどうかを確認することが良いと思います。昭和56年に建築基準法の上の耐震基準が改正され、より厳格な基準が用いられており(新耐震基準)、新耐震基準に則って設計・施工された建物であれば、耐震上、顕著な問題を抱えていないとの推測が働きます。
これに対し、昭和56年以前の旧耐震基準の建物であった場合には、耐震上の問題を抱えている可能性を否定できません。この場合、耐震診断を行うことをお勧めします。
耐震診断の結果、耐震上の問題が指摘され、特に判定基準を大幅に下回るような場合(判定基準値Is値が通常0.6以上求められるところ診断結果が0.3未満である場合等)には、建替えを前提に、テナントに対して明渡しを求めることができるか否か、検討することになります。
テナントに明渡しを求める場合、テナントとの契約が定期借家契約でない限り、賃貸借契約を中途解約ないし更新拒絶により終了させる必要があります。ただし、借地借家法上、中途解約ないし更新拒絶には正当事由が求められていることから(借地借家法第28条)、建物の耐震上の問題が正当事由になるか否かが問題となります。
この点、近時の裁判例においては、耐震上の問題を正面から捉えて正当事由を認める事例が散見されます(東京地裁立川支部平成25年3月28日判決等)。もっとも、耐震上の問題が認められたとしても、耐震補強工事が容易であり、また賃貸人が建替後の具体的な計画を主張しなかったこと等を理由に正当事由を認めなかった事例(東京地裁平成25年2月25日判決)もあることから留意が必要です。
耐震上の問題を抱えているとしても、耐震補強工事を施せれば建物を継続利用できることも多いことから、耐震補強工事の検証が必要です。また、法律上、「建物の使用を必要とする事情」(賃貸人が建物ないし返還後の土地をどのように使用したいと考えているのか)が正当事由の主たる事由として掲げられており、正当事由判断において最も重視されることから、建替計画の内容についてもある程度明確にする必要があります。
さらに、テナントに対して移転を求める以上、一定の立退料の支払は必要となります。どの程度の立退料が必要かについては、テナントが貸室をどのように使用しているか、移転によってどのような不利益が生じるかという点や、耐震問題の緊急性等の事情によって異なります。いずれにしても、テナント側の事情をよく聞いたうえで、適切な立退料の支払が求められます。
以上のとおり、耐震性に関しては専門的な判断を要する事項が多いことから、専門家に相談することをお勧めします。

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